「子ども生態系」という概念

小川誠さんより、「五色塾便り」が届きました。

五色塾は青少年の自立を支援する取り組みです。

小川さんの家で塾生が一緒に寝食を共にし、稲の不耕起栽培や自然農などで、生き物との共生を目指した野菜作りや米作りに取り組んでいます。

http://goshikijuku.world.coocan.jp/


「五色塾便り」第114号に「子ども生態系」という概念が紹介されていました。

子どものこと、自然のことをいつも深く考えておられる小川さんらしい考察だと思いました。

転載を快く了承いただきましたので、皆さんにご紹介します。


子ども生態系の由来
以前に五色塾便り第97号で「子ども生態系」について論じたことがあります。今の子ども達や青少年はどうしてこんなに昔と違ってしまったのか、そのことを考えていたときに三島次郎という生態学者の話を聞いていて気が付いたのが「子ども生態系」という概念です。まずそのことについて説明しておきます。
子ども生態系とは子どもが子どもらしく成長できる生活環境をさす言葉で、具体的には4,50年前まで日本のどこにもあった地域共同体のことです。それをなぜ今更そのような分かりにくい言い方にするのかと言えば、子どもが育った生活環境は、あたかも一種の生態系のように見えるからです。つまり、そのような地域共同体の中で生活するだけで、かつての子どもたちは競い合い、助け合い、補い合いながら、生命力を全開して生きていて、個人差や一部の例外はあっても、だいたい皆一様にしっかりした青年になりました。総じてみな家族を大切にし、地域の人々や社会秩序を大切にし、自ら志を立てて、社会に出て行きました。学力の差は致し方ないものがありましたが、みなそれなりに人間性と社会性を備えた青年になったものです。それは家庭の教育力があったからだとか、地域社会がしっかりしていたからだと言う学者や識者が大勢います。確かにそういう面は否定できないと思います。しかし、私はそのような教育力という側面は、実は多分にその地域の人と自然が織り成す係わり合い、つまり地域固有の日々の生活の営み自体ではなかったかと感じるのです。それは、ある特定の環境の中でその生命力を全開して生きている動物と同じように、換言すると、その生態系の中で完璧に適応している動物と同じように、子どももその生活環境で生命力を全開して生きることで見事に適応していたということではなかったか。ところが、それは私たちが想像しているよりもはるかに大きな教育力を持っていたのではないかと思うのです。それで、そのような生活環境を「子ども生態系」と名づけたわけです。

子ども生態系の基本構成
子ども生態系では地域の子ども達と周辺の自然や遊びのできる環境がもっとも重要な構成要素です。そこでは子ども独自の世界が形成されています。そして、自分の家は言わずもがな、近所や地域の家々も子ども達の遊び場や通路として重要です。それから、近所付き合いや、親戚付き合い、また子どもの親同士の付き合いや地域の人との付き合いも大切な要素です。そのような繋がりが多ければ多いほど、それは社会性や人間性を育てる要素としてよく機能します。それから、その地域社会に組み込まれて、役割を分担している学校の存在も欠かせません。そういう学校は子ども達の楽しい生活の場となります。
 他にも色々な要素はあるでしょうが、基本的にはその程度の要素が集まれば、「子ども生態系」が出来上がるように思います。
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